注目記事
【(株)サザコーヒー 鈴木誉志男会長 特別寄稿文】中国から学ぶもの

はじめに

昨年に続き、サザコーヒーの鈴木誉志男会長から日中友好への想いを綴った寄稿文を頂戴いたしました。

素敵な雰囲気のサザコーヒー店内には、海外の民族仮面や食器などが展示されており、気になっていた方も多いのではないでしょうか。
今回の寄稿文にそれらの文物への想いが書かれています。中国から日本へ渡り独自の発展を遂げた喫茶文化を、今度はコーヒー文化に昇華させたい。
そんな鈴木会長の思想の旅路にご注目ください。

ニューヨーク近代美術館のピカソの絵画とともに。

喫茶文化の神髄をコーヒー文化へ

株式会社サザコーヒー  会長 鈴木誉志男

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が終盤に差し掛かっている。
サザコーヒーの店名は、臨済宗の「且座喫茶」(さざきっさ)を由来としている。「さー、座してお茶をめしあがれ」の意味だ。臨済宗は鎌倉時代の新仏教で栄西が2度、渡宗して天台山で学び、鎌倉幕府2代将軍 源頼家の支援を受けた宗教だ。栄西は宋から持ち帰った茶の種を栽培し「茶祖」とも呼ばれた。

特筆すべきは、茶を飲料から禅の自力による悟りの精神性に結びつけ、高い喫茶文化まで高めたこと。これは世界に類を見ない飲料文化だ。臨済宗は鎌倉・室町幕府に保護され政治の世界に深く結びつくことになる。

座禅が剣の修行の一環として武士社会に広く支持される。安土・桃山時代の織田信長の頃には、名を持つ武人は優れた茶人になり、さらに美意識は高まる。茶碗に「一国相当」といわれる名器もあらわれ、バブル期を迎えた。茶碗一個と一国を交換するに値する意味だ。現代日本の国宝「油滴天目茶碗」もそのひとつだ。

この陶器は中国禅宗の中心地であり、茶葉の産地でもあった中国浙江省の天目山で焼かれたもの。この茶碗の美は小宇宙との交信を想像すると言われている。手ひねりの茶碗に美を感ずる民族は、中国人、朝鮮人、日本人と言われている。

サザコーヒー本店を象徴する民族文物。

 

そこでコーヒー文化にも、コーヒーの世界にも茶文化と同じような文化があるのではないかと考えた。茶道具の宝物の中には、茶器を取扱うときに使用する布、服紗(ふくさ)があり、宋や明代の古代名物布がある。このほか床の間に飾る書や水墨画の掛軸もある。これらは茶の主人の自慢の品々だ。
「コーヒーの世界にもあるではないか。コーヒー産地のお宝を展示しなさい」と示唆してくれたのは茨城大学名誉教授で、仮面の作家ともいわれる十河雅典先生だった。「コーヒーの産地アフリカやパプアニューギニアの仮面はモダンアートの原点。ピカソ、マチスが学んだものだ」と説明された。

さらに古代名物布ならまだまだある。インドのインダス文明発祥の絣(かすり)。南米インカ文明、ペルー、ボリビアには、アルパカやリャマの動物で作った毛織物で天然染色の古代布。中南米アステカ文明には天然染色の線の古代布。その他、カリブ海のモラ手芸の布。西インド グジャラート州のミラー手芸の布などがある。これらは女性たちが手間と時間をかけた魂の仕事といわれている。コーヒー生産ゾーンは、まさにアートゾーンであった。コーヒー文化の発見である。

中国の茶から喫茶文化が生まれた。私達はその思想を学び、今コーヒー文化に進化させようと試みている。コーヒー生産地のアートを探す旅を面白がって続けようと思っている。

 

ペルーのインカの茶碗と織物。

株式会社サザコーヒー

事業内容/コーヒー豆の販売、喫茶、焙煎および流通卸など
設立/1942年(昭和17年)
店舗/ひたちなか、つくば、水戸駅、JR品川駅、東京、新橋など
直営16店舗展開
おすすめの記事