中国は1月に2022年末時点の総人口を14億1175万人と発表し、21年末から85万人も減少。少子高齢化のスピードが想像以上に早く、衝撃的なニュースとして報道されました。
こうした社会背景のため、中国でも介護・高齢者向け産業の重要度が向上しています。今回は県内で屈指の実績を誇り、中国人スタッフも働いている社会福祉法人 木犀会を通して、日本と中国の超高齢社会について触れてみたいと思います。
県内介護業界のパイオニア
社会福祉法人 木犀会は茨城県内で30以上の高齢者福祉施設、障がい者福祉施設を運営。設立されたのは1996年で当時、老人福祉・介護業界はターニングポイントにありました。現行の制度では限界が訪れ、急増する高齢者に対応できないという議論が巻き起こっていたのです。その結果、「介護保険制度」が制定され、2000年4月に施行。40歳以上の全国民が被保険者となって保険料を支払い、65歳以上の要介護者を社会全体で支える仕組みができました。
制度発足以降、民間事業者の居宅、サービス分野が解禁され、新規参入が活発化。制度前から活動していた木犀会はまさに介護事業のパイオニアですが、当時は民間事業者を利用する人は少なく、最初に設立した老人ホームが満室になるまで2~3年もかかったそうです。
ニーズを形にして利用者増を達成
木犀会の木村秀樹理事長は介護業界一筋ではなく、元はアパレル業界というまったくの異業種で働いていました。役場職員だった母が一念発起してケアハウスを設立。その準備の時に施設長をやってほしいと母から依頼を受けたのが、この業界に入ったキッカケです。
「制度も施設もまだない時代だったし、最初の半年は本当に大変でした。ただ、逆にお客様からの要望はたくさんありました。例えばこういうホームがあればとか、ヘルパーに来てほしいとか。そういう要望に応えるべく独自にサービスを開発していったら、それが評判になって利用者が増えていきました。介護もサービス業のひとつと考えれば、アパレルで培った経験も生きてきます」と木村理事長は語ります。
一方で「福祉でお金を儲けてはいけない」とする風潮が根強い日本社会では、批判も度々出ることに。「それでも適切な対価をいただくことは大事なこと。ビジネスとして自立できるようにしたからこそ、社会に根付いたと自負しています」と木村理事長。今では介護をサービス業ととらえるのはむしろ普通ですが、相当な苦労があったことがうかがえます。
高齢者の自立を一緒に目指す
ビジネスとしての自立を目指してきた木犀会。同時に、高齢者や入居者たちの自立もずっと重視してきました。掲げている「生きがい・自立・豊かさ」という三つの理念には、人としての自立=尊厳を福祉の力で支援する想いが込められています。介護スタッフたちは見守りしながらもすぐに手伝うのではなく、自力でできるよう支援するという姿勢です。
実際、元々自立して生活できていた高齢者が、骨折などのアクシデントで入院して何から何までやってもらっていたら、そのまま寝たきり状態になってしまったという事例は数多くあるそうです。「そうならないための介護予防です。自分のやれることをやっておいて、自立できるようになっておく。無駄に長い人生じゃなくて、最後まで有意義に使うためにも、自分でできるように努力していくのが必要だと思います」と木村理事長は語ります。
そんな木犀会のスタッフたちは、なんと70歳以上なのに元気に働いている職員もいたり、外国人スタッフもいたりと実に多種多様。日本も中国も未曽有の超高齢社会に突入しながら決定打がなく苦悩していますが、介護の現場にこそヒントが詰まっているように感じます。
社会福祉法人 木犀会
http://www.mokusei-grp.jp/