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China Report No.03「世界最大の中国ビール市場と日系メーカーの戦略」

【No.03】世界最大の中国ビール市場と日系メーカーの戦略

中国トップ3の華潤雪花ビール(左)、青島ビール(中)、燕京ビール(右)

 

一般的に中国のお酒と言えば白酒や紹興酒だが、実はビールの方が圧倒的に飲まれている。伝統的な中国酒は価格もアルコール度数も高く、酒宴向き。一方でビールは低価格で気軽に飲めるお酒として人気が高い。市場規模も2003年に生産量と消費量がアメリカを抜いて世界一になり、右肩上がりの成長を続けてきた。

中国ビールの代表的存在といえば、創業1903年と最も歴史が古い「青島ビール」だ。創業当時の山東省青島はドイツの租借地だったため、質の高いドイツ式醸造技術が採用され、それが同社の強みになった。

青島ビールは長らく中国でシェアNo1だったが、そこに「華潤雪花ビール」という強力なライバルが出現する。同社は創業が1994年と後発にもかかわらず、猛烈なMAで急成長し、2006年にシェアNo1を奪取。その地位を今も死守している。この二強に北京が地盤の「燕京ビール」を加えたのが中国ビールトップ3だ。

ただでさえ競争が激しい中国ビール市場だが、さらに強力な外資まで乗り込んできている。バドワイザーなどを展開しベルギーに本拠を置く「百威英博(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)」と、デンマークに本拠を置く「嘉士伯(カールスバーグ)」だ。この5強で中国のビール生産量の約8割を占めており、この牙城を崩すのは困難な状況だ。

しかし、この5強が巨額の利益を上げているかと言うと、話はそう簡単ではない。実のところ、中国ビール市場の成長は2013年をピークに減少し続けているのだ。消費者の選択肢がワインやウイスキーにまで広がったことや、業界内の過当競争が利益を圧迫していることが原因である。ドイツ銀行によると中国のビール生産量は世界全体の4分の1、売上高は10分の1を占めるほど巨大なのに、利益でみると世界全体のわずか3%に過ぎないという。

苦境から一転、再起をかける日系ビールメーカー

中国で販売している日系ビール。左からキリン、アサヒ、サントリー、サッポロ

 

競争熾烈な中国ビール市場において日系メーカーのシェアは極小であり、存在感は非常に乏しい。
だが、かつては輝かしい時期もあった。中でもサントリーは1984年、最も早く中国に進出した。攻略エリアを上海に絞り、中国人消費者の味覚に合う味を徹底的に研究し、2000年代前半の上海ではトップシェアを占めていたほどだ。だが、その後は激化する業界再編の中で思うような業績を上げられず、2015年に合弁パートナーの青島ビールに中国事業会社の全株式を売却。サントリーブランドのビール販売は一応継続しているものの、事実上、中国ビール市場から撤退した。また、これよりも前になるが、サッポロビールも2009年に撤退している。

1994年に参入したアサヒ、1996年に参入したキリンもサントリーと同様の苦境に陥ったが、今は暗いトンネルを抜けて好調の兆しが見えている。キリンが方針転換を行ったのは2011年。競争の激しい中・低価格帯ビールでの競争を避け、「日本品質」を売りにプレミアム市場で勝負することにしたのだ。加えて、シェアNo1の華潤集団と合弁会社を設立し、販売網を拡大させた。幸いにも訪日する中国人観光客が増え、帰国後も「日本品質」を味わいたい層が2015年頃から拡大した。キリンの「一番搾り」の価格は中・低価格帯ビールの3~5倍もするが、売上は年間10~20%のペースで増えているという。

一方、アサヒも「スーパードライ」が好調だったが、2017年に保有していた青島ビールの全株式を売却し、中国事業をひとまず整理した。そして欧州高級ビール事業を強化。2016年にイタリアの代表的ビールであるペローニ(1846年創業)を、2017年には“元祖ピルスナー”として名高いチェコのピルスナー・ウルケル(1842年創業)を買収した。

2018年からは買収した欧州ビールを日本、さらには中国でも販売開始。イタリアンレストランや洗練されたバー、高級スーパーなど食・ファッションにこだわりがある層が集う店舗にはペローニを展開。伝統的なビアパブやホテルのバーなどビール愛好家が集う場所にはピルスナー・ウルケルを展開している。こうして開拓した店舗にはスーパードライも展開しやすくなるため、プレミアム市場での優位性が向上している。

サッポロビールも2018年から百威英博(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)に販売を委託し、9年ぶりに中国ビール市場に再参入した。低成長が続く中国ビール市場だが、プレミアムビール市場は2ケタ成長を続けている。当然、競合各社もうまみのある市場を虎視眈々と狙っている。日系ビールメーカーが「日本品質」や苦境から学んだ経験をどこまで武器にできるか、今後も注目していきたい。

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