3月5日は「常陸牛の日」(※1)って、ご存知でしたか?
この日、県内在住の中国人を対象に、「常陸牛モニター オンライン」を実施しました。
コロナ禍で変更が相次いだものの、結果的には意外な発見が盛りだくさん! 常陸牛の新たな可能性が見えました。
※1 1977(昭和52)年3月5日に茨城県常陸牛振興協会が設立され、「常陸牛」という茨城ブランドの和牛が誕生したことが由来。一般社団法人 日本記念日協会により認定・登録されている。
◆バラエティ豊富な牛肉料理が集結!
海外で高まる和牛人気。茨城県のブランド牛「常陸牛」も海外展開を進めており、現在はベトナム、タイ、アメリカ、シンガポールの4カ国に輸出しています。次はやはり巨大な人口を擁する中国市場を開拓したいところですが、コロナ禍で輸出解禁の見通しは立っていません(※2)。
それなら、まずは茨城県に住んでいる中国人から常陸牛のことを知ってもらおうと、茨城県が「常陸牛モニターツアー」を主催。木内酒造と本誌『LI』で企画・運営を行い、「常陸牛の日」である3月5日に開催を決めました。予め中国人モニターを募集するポスターを作成し、茨城大学、筑波大学、日本語学校などに掲示。定員20名近くの留学生、社会人がすぐに集まりました。
当初はバスで牧場などを見学するツアーの予定でしたが、まん延防止等重点措置の延長に伴い、急遽オンライン形式に変更する事態に。当然ながら実際に牛を見たり、シェフによる常陸牛メニューを楽しみにしていた人も多く、参加を辞退したモニターも数名出ました。その残念な気持ちは本誌も同じでした。ところが「災い転じて福と為す」。オンライン形式にしてみたところ、予想外の発見が多くあったのです。
※2 2001年に発生した牛海綿状脳症(BSE)の影響で中国への牛肉輸出が停止。2019年に再開に向けて実質合意したが、コロナ禍で停止状態となり現在でも先行きは不透明。
◆まずは県内在住の中国人に知ってもらう
まず、事前に常陸牛500グラムを中国人モニターへ送付し、食べてもらった上で当日オンラインで参加してもらうことに。
ただ、せっかく自宅のキッチンが使えるので、「中国の地元料理」といった特色あるメニューを作ってもらうように案内。合わせて、調理レポートも開催前日までに送ってもらうことにしました。
事務局に集まった調理レポートを見て、一同ビックリ。色取り取りの牛肉料理がズラリと揃ったからです。
牛肉料理一つで、ここまでバラエティに富んでいるとは。流石は広大な国土で、豊かな食文化を育んできた中国です。
日本人では想像しにくい料理が出てきたこと。
中国人が牛肉をどのようにして食べる習慣・傾向があるかがわかったこと。
これらはオンライン形式に変更したからこその収穫でした。今後、中国人を対象にした常陸牛メニューを作るときに大いに参考になります。
◆発見!常陸牛の新たな可能性!!
そして迎えた「常陸牛の日」当日。木内酒造酒出センター(那珂市)を会場に「常陸牛モニター オンライン」がスタートしました。
開会にあたり、茨城県農林水産部畜産課 脇本亘氏は「まずは皆さんに常陸牛を知ってもらい、SNS等で中国に紹介してもらう流れを作りたい。そして、アフターコロナにはぜひ中国の家族や友人も茨城県に来て食べていただきたい」と挨拶しました。
続いて、プロモーション動画や資料を交えて、脇本氏が常陸牛の定義や輸出状況を説明。その後は会場のキッチンにて、木内酒造のシェフがカツや焼き肉など5品の調理を実演しました。
イベント後半では、中国人モニターたちが調理レポートを発表。茨城大学留学生のモニターは「bilibili(※3)に投稿されている料理動画を参考にして、牛肉餡餅を作りました。脂質が多い肉のため、餡にしっとりとなじみました」と述べました。社会人モニターの一人は、「とろけるような柔らかさに感動!煮込むと上質な肉汁が溶け込んで、すごく美味しいスープができました」とこちらの評判も上々。また、江蘇省出身の社会人モニターは「私の故郷では、牛と言えば水牛を食べることが多いです」と話し、食文化の違いを実感しました。
モニターたちによる自慢の中華料理を見て、脇本氏は「常陸牛を中国に輸出することはもちろん目標ですが、皆さんと同様、世界各国に中国系の方たちがいます。中華メニューを作ればすでに進出しているアメリカやシンガポールなどでも新たな提案ができる。そういう気付きを与えてもらいました」と締めの言葉を述べました。
後日この日のイベントは、日本経済新聞や茨城新聞で記事になりました。また、モニターたちも早速、自分が作った常陸牛メニューをSNSにシェアしており、じわじわと反響が出ているようです。
※3 若者に人気の動画投稿プラットフォーム。動画にコメントを追加できる機能があり、中国版ニコニコ動画とも言われる。