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【特集】コロナ電気 ものづくりの老舗 変化と挑戦

ひたちなか市の老舗企業として戦後の高度経済成長に大きく寄与し、現在もその高い技術力で各分野の「なくてはならない」製品を造り続けているコロナ電気。
8月に創業70周年を目前に控える区切りのタイミングにあたって、コロナ電気のこれまでとこれからをお聞きいたしました。

代表取締役社長 柳生 修 × 専務取締役 柳生 昌克 

社長「日立市に並んでひたちなかは製造業が盛んです。日立製作所さんが関連事業所をおいたことで戦後特に発展してきた土地柄なので、ものづくりする環境として良かったし、そんな中で事業を続けてこられたことは幸せだと思います。
皆で協力して町の賑わいづくりをやっているという点では、江戸の頃からの歴史がない代わりに、戦後の新しく住んだ方たちが“第二のふるさとづくりを”ということで協力しているような感じもあります。そうやって町を活性化しているというのがひたちなかの特徴で、良いところだと思います」

創業の頃、戦後の経済成長とエレクトロニクス

社長「父は結婚後に母の実家がひたちなかで経営していた商店を手伝っていたのですが、“自分はやはりものづくり、技術を活かした製品作りをしたい”と、親戚の空き家を借りて日立市内で創業しました。
しばらくすると通勤が大変だというのと(笑)、取引先が日立地区の事業所よりも旧勝田地区の事業所の方が多くなり、ひたちなかの現在の場所に移転しました。当時日立地区は火力発電所や原子力発電所などのいわゆる重電が中心で、ひたちなか側は戦後のエレクトロニクスブームで発展してきた計測器や自動車部品、ビデオデッキ等エレクトロニクスの工場が増えていました。
そのため我々の取引先としてはひたちなか側との結びつきが強くなっていたという背景があるのです。ですので、私は生まれも育ちもひたちなかです(笑)」

戦後のエレクトロニクス需要を捉え、成長を遂げたコロナ電気。一方、本社の位置する通りは『コロナ通り』と名付けられているほど、地域に根付いているのも印象的です。

社長「この通りがコロナ通りとなっているのは、そもそもまわりに山林と畑だけで他に道路もなかったからです。その前は山林を切り開いて酪農をやってらっしゃる方がいたような地域でした。牧場にサイロがあったり。創業当時の写真が残っていますが、畑の真ん中に工場がポツンとできたという感じです。だから道路はうちの会社に行く道路だけ。
だからコロナ通りとしか言いようがない(笑)。小学校もなければ住宅もろくになかったです。それが日本の産業の成長とともに70年代宅地化されて、みんなで町を作っていきました」

いくつもの不況を乗り越え、意識する「変化」

社長「先代から会社を受け継いでから36年(2021年12月現在)。会社の歴史の半分ぐらいは経営者として担ってきているわけですが、バトンタッチしたとき会社の財務内容は良くなかったです。その後90年代にはバブルが崩壊、2001年アメリカのITバブル崩壊、それに2008年のリーマンショック等、何度も経済的な波がありました。
特に半導体関係の仕事はもっと短い一年周期ぐらいで好調と不調の波を繰り返すようなところがあります。リーマンショックの時が業績的に一番大変でしたかね。売り上げがあっという間に半分以下。一か月注文ゼロという月もありました。でもそんな中でも心強かったのは、取引先さんからいろんな応援の声をかけていただいたこと。非常にありがたかったですね。
それらを思えば、今の状況はとても恵まれていると思います。この3年半導体関係は不況知らず。どんどん売り上げも受注量も増えています」

一方、好調な業績に楽観することなく、“変化”も強く意識しています。

社長「業態としては創業以来変わっていません。ですが扱う商品は変わってきているし、お客様の要望の重点も変わってきています。そういったご要望や、時代にあわせていかないといけないと感じています。
働く環境もそうですね。変化していかないといけない。例えば出勤してすぐ作業に入れるように、製造現場には床暖房が入っています。銀行の方には驚かれましたが(笑)。このあたりは雪が降らない割に冬けっこう冷えるんです。昔の建屋だと手がかじかんで、ストーブ炊いてから仕事がまともに始められるまで30分~1時間かかっていました。今は床暖房のおかげで出社してすぐ作業に入れる。そういった点は社員にも喜んでもらっています」

また、専務もそのメリットを次のように説明します。

専務「初期投資はかかりますけれども、社屋は高さがありますので下から温めた方が効率的ですから。高圧の電気は一番使用量が多い月の電気代が一年間反映されるのですが、うちはやはり暖房のために冬が電気のピークになっていました。床暖房にしてエアコンを使わなくなったおかげで電気のピークカットができて、経済的にも環境負荷的にもメリットがありました。当社は環境ISOの認証も受けていますが、トータルで効果がありますね」

地道な作業をやりきって構築する次のビジョン

また初の外国人採用というのも最近の特筆すべき変化のひとつです。

専務「ODAで政府が我々の計測器を買い上げていただいたり、商社さんを通して海外に販売したり。フィンランドの企業と共同研究をしていたこともありましたが、外国の方を採用したのは実は初めてでした。

今回、人材難の中で入社してもらった方は優秀ですし、受け入れる側も新しい空気を感じています。意思疎通の仕方など仕事の上でも壁を取り払うことが重要だと思っているので、その辺の先駆けになってくれているなと感じていますね。残念ながら今後日本の人口が少なくなっていくのは避けられないので、今後は外国人採用も積極的にしていきたいなという思いはあります。

また、うちの仕事はBtoBでもかなり特殊で、学生さんに見学に来ていただいてもなかなか身近に感じてもらえないところがあります。ですので、わかりやすいプロモーションや地域貢献活動などでもっと我々を知ってもらう必要があるのかなとも思います」

時代や環境の変化を乗り越え、成長を遂げてきたコロナ電気。地に足付けて、さらなる変化を確かな眼差しで見据えています。

専務「半導体業界はもちろんですが、通信などのハイテク分野の技術革新がどんどん進んでいく時代になっていくと思います。次のタームの目標として、そのためさらに技術を磨き、今までためたノウハウを活用することももちろんなのですが、今までのやってきたことを一度棚卸して、柔軟に対応できる体制を構築していくことが直近の課題です。地道な作業ではあるのですけれども、やるべきことだと思っています。そうすることで製造という分野のより上流部分、設計・試作といった段階からお手伝いできるようになっていきたい。実際そういうお客様のニーズは高まってきていると考えています」

老舗企業の変化と挑戦は、これからも頼もしく続いていきます。

コロナ電気株式会社

設立/1952年8月1日
住所/茨城県ひたちなか市東石川3517
事業内容/医療機器の設計、製作および販売、理化学機器の設計、製作および販売、電子計測機器の設計、製作および販売、電源装置の設計、製作および販売、板金加工/焼付塗装
社員数/約90名
http://www.corona-el.co.jp/
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