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【特集】ローカルなのにグローバル!「空の玄関口」小美玉のこれまでと未来
左からインタビューの橋渡しをされた木名瀬幸吉 茨城県日中友好協会副理事長、島田市長、LI発行人黄磊

「茨城の空の玄関口」である茨城空港を擁し、県内随一の農業・酪農を誇る小美玉市。
長く市政を舵取りしてきた島田穣一市長はこの4月末に退任します。
発展の礎となったこれまでの取組みと未来への期待について、自身もよく茨城空港を利用しているLI発行人の黄磊がお聞きしました。

│聞き手│LI発行人 黄 磊  │構成・文│滝口 亮

小美玉市長 島田 穣一 

― 茨城空港が開港した2010年のとき、私は茨城大学に在学中でした。中国に帰国するのが格段に便利になって嬉しかったです。年2~3回は利用していました。

嬉しいお言葉です。空港を開港して本当に良かったと思えてきます。キッカケは以前から地元にある航空自衛隊の百里飛行場でした。これを民間共用できれば人とモノの流れが増加し、地域活性化が前進する。その一心で国に対して、県と一緒に粘り強く要請したことが実り、日本で98番目の空港として開港しました。

それでも当初は、「成田、羽田空港があるのに、なぜ関東圏に新たな空港を作る必要があるのか。利用者はわずかだろう」という声もありました。それを様々なアイデアと努力の結果、利用者は増え続けていったのです。
予想外に海外からの注目度が高かったことには驚きましたね。旅行検索サイトのスカイスキャナーが台湾で実施した調査では、仙台や函館を抑えて「日本で一番行きたい都市」に小美玉が選ばれましたし、中国人観光客にもたくさん利用してもらいました。

おかげで2018年に来場者数1,000万人、2019年に年間利用者数80万人を達成することができたのです。

― 本当にユニークなアイデアが多いですよね。駐車場が無料なので車を停めたまま出発できるし、到着したら小美玉特産のヨーグルトがもらえるし。おかげで小美玉市に興味を持つキッカケになりました。

あれ、いいでしょう!成田や羽田では難しいですが、地域の空港ならではのおもてなしです(笑)。
今や「茨城の空の玄関口」として、無くてはならない空港に成長できたと自負しています。

ただ残念ながら、コロナ禍で国際線は全便欠航しています。
加えて、茨城県をスルーして東京や日光など、その他の観光地に向かってしまう課題も残っています。

 

― もったいないですよね。友人の中国人も小美玉市に長年住んでいますが、とても気に入っていますよ。お祭りにも何度も誘ってくれました。

これまた嬉しい話!そういう他県や海外から観光してくれたり、移住してもらえるよう、いろいろな施策を打ち出してきました。
代表的なものは、2014年にオープンした「空のえき そ・ら・ら」ですね。ヨーグルト工場、物産館、農産物直売所などがあります。空港からすぐですので、ぜひ立ち寄っていただきたいです。

小美玉市の強みはやはり農業・酪農です。乳牛頭数は県内一、鶏卵の出荷量は県内トップクラスを誇ります。それでも、これだけでは農業収入に限界がある。「6次産業化」を図らなければ生き残れない時代です。
そこで(株)小美玉ふるさと食品公社を設立し、加工品を作るようにしました。主力商品はもちろん、搾りたての生乳を100%使ったヨーグルトドリンクです。

― 茨城空港に到着したときに何回もいただきました(笑)。本当に美味しいです。

味が濃厚でしょう!ただ、この製品をどう普及させていくかが次の課題でした。単なる宣伝だけでは、一過性に終わってしまいます。行政・事業者・市民が一丸になって取り組んでいきたい。その想いで2014年から「『乳製品で乾杯』を推進する条例」を施行しました。市内で行うイベント、お誕生日会、宴会、結婚式などでは積極的に乳製品で乾杯したり、おもてなしをしています。お酒じゃないから子供も乾杯できるのがポイントです!
今日もヨーグルトがありますので、みんなで乾杯しましょう!!

市長を交えて乾杯!この乾杯文化で自然と地元特産品への愛着が育まれる

若者や外国人の斬新な考えに期待する未来

― 市長がこれまで取組んできたことが、着実に実を結んでいるのを実感します。ぜひ未来の小美玉市への期待についてもお聞かせください。

少子高齢化や景気後退は日本全体が直面している課題ですが、それらに対処していくためには、若者や外国人が持つ斬新で柔軟な考えが不可欠です。
市役所が実際に行っている取り組みとして「政策形成実践研究」があります。若手職員が数チームに分かれて、半年間かけて課題解決のための調査・研究をします。
そして市長や幹部職員などを前に報告会を開催し、採点をするというものです。評価の高かったものは、実際に住民サービスに取り入れています。

また、現在1,600名が住んでいる外国人も生活に困らないよう住民サービスの多言語化に力を入れて、共生できる社会づくりを進めています。
そもそも国際交流の歴史は古く、3町村合併前の美野里町の頃から、酪農が縁となり米国カンザス州アビリン市と姉妹都市交流を続けてきました。

小美玉市はのどかな田園風景が広がる「ローカル」ですが、同時に茨城空港という貴重な特徴を生かして、若者と外国人の活力とともに「グローバル」な町として発展していけると確信しています。

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