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China Report No.13「古き良き時代の象徴「胡同」」

筆者は2000年に北京に留学していた。
当時の中国は発展の兆しはあったが、そのスピードはまだ緩やかで牧歌的な雰囲気があった。

北京には「胡同」(hútòng/フートン)と呼ばれる下町があちこちに残っており、散策するのが大好きだった。モノトーンの屋根と壁。壁に貼られた政治スローガン。にぎやかな露店。路上でお茶を飲んだり、麻雀したりする人々。日本では失われてしまった光景が、そこにはまだ存在していた。
「あぁ、中国に来ているんだな」と感慨にふけるのに最高の場所だった。

観光地として人気となった胡同

しかし、2001年に悲願だった北京オリンピック開催(2008年)が決定してから、中国の発展は異次元のスピードで突進していく。各地の胡同はほとんどが取り壊され、新しく高層ビルや駅、ショッピングモールなどが建てられていった。中国の街並みは劇的に近代化しキレイになったが、素朴だった胡同はもうない。
かつての日本も東京オリンピックを契機に下町を取り壊し、高層ビルが林立するようになったが、あれと全く同じである。

その後の中国の発展は周知の通りだ。GDP世界第二位の経済大国にのし上がった一方で、激し過ぎる競争と変化に中国人も息切れしている。
その反動だと思うが、かろうじて残った胡同が整備され、観光地として人気になっている。古き良き時代の象徴として、胡同が今も息づいているのは嬉しいことだ。

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