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China Report No.10「中国における高倉健の存在感」

日本を代表する俳優、高倉健(1931年~2014年、享年83歳)。
生前はテレビにほとんど出なかったため、私生活はあまり知られていない。そのため映画で演じた「強くて優しく、それでいて不器用」な姿がそのまま彼のイメージになっている。
実は高倉健は、中国人とくに年配者にとっても特別な存在なのだ。

1979年、高倉健が主演した『君よ憤怒の河を渉れ』(中国語題:『追捕』、※1)が中国で公開された。これは収束間もない文化大革命後に初めて公開された外国映画だった。
映画は大変な人気を博し、観客動員数は8億人にまで達したとされている。

そして彼に刺激を受け、映画の道を目指した中国人も多く存在した。最も有名なのは、中国を代表する映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)だ。彼は2008年、2022年の北京オリンピック開会・閉会式の総監督も務めたので、ご存知の方も多いだろう。
張芸謀の熱烈なオファーが実り、高倉健を主演にした『単騎、千里を走る。』(中国語題:『千里走単騎』、※2)が2006年に公開された。当時のインタビューで張芸謀は、「健さんが僕の映画に出てくれた。本当に嬉しい。夢が叶ったんだ」と子供のように喜んでいた。

彼が死去したときは中国政府が哀悼の意を表し、特番が組まれたほどだった。日本人にとっても中国人にとっても、高倉健の存在感は巨大なのである。

※1 本作は中国映画『追捕』(日本語題:『マンハント』)として2017年にリメイクされた。監督は呉宇森(ジョン・ウー)。出演は張涵予(チャン・ハンユー)、福山雅治など。
※2 ロケ地のひとつ「麗江古城」について、今号の「CULTURE TIPS」で紹介。

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