注目記事
China Report No.12「まるで仙境!世界遺産 武陵源の迫力!!」
石柱の上に、本当に仙人がいそうな雰囲気。

コロナ禍で停止していた海外旅行もインバウンドもようやく限定的に再開した。今はまだ難しいが、また中国へ行きたいと願っている。そこで、今回は世界遺産の武陵源(ぶりょうげん、湖南省張家界市)を紹介したい。筆者は2018年に訪れたが、別の惑星に漂着したような、仙境に迷い込んだような気分になり、言葉を失うほど圧倒された。

1億8千年かけて創造された奇跡

約1億8千年前、この一帯は海底だった。それが地殻変動によって少しずつ地上に隆起。その隆起した砂岩層が長い年月をかけて雨や風によって浸食され、巨大な石柱が林立するようになった。石柱は高いもので400mに及ぶ。日本で最も高いビル「あべのハルカス」が60階建て300mなので、石柱のスケールがどれほど巨大か、わかるだろう。

石柱の上に、本当に仙人がいそうな雰囲気。

 

驚くのは、そんな巨大な石柱が果てが見えないほどに広がっているのだ。総面積は369㎢で、全体で3100本以上もあるという。その圧倒的な光景を見ていると、いつしか常識で物事を考えることを放棄し始める。もしかしたら神や仙人、そういったものが存在しているのではないか。そんな考えすら芽生えてしまうのだ。

武陵源は、日本人はもとより中国人でも知らない人が多い。コロナ禍前は大手旅行会社がツアーを実施していたので、いずれ再開するはずだ。ぜひとも行って体験してほしい。

果てが見えないほど、石柱が広がるとんでもない光景。

映画『アバター』との因縁

さて、武陵源には面白いエピソードがある。それが映画『アバター』との因縁だ。本作はジェームズ・キャメロン監督によって撮影され、2009年に公開された。世界中で大ヒットし、現在でも世界興収歴代1位の座を保持している超大作だ。そして、舞台となる衛星パンドラの「ハレルヤ・マウンテン」を構築するうえで、この武陵源がロケ地のひとつに選ばれたという。たしかに武陵源の壮大さは、別の惑星と言っても過言ではない。ここほどロケ地にふさわしい場所もないだろう。

ロープウェイに乗って上層部へ。自然の驚異を間近で堪能できる。

 

ところが、キャメロン監督が北京を訪れたとき会見で「原型は、安徽省の黄山だ」と発言した。これに中国のネットユーザーが、「いや、あれは武陵源だろ」と過敏に反応し騒動になった。とくに映画のヒットにあやかって商売繁盛を狙っていた張家界市当局は、「乾坤柱」という名前だった山を強引に「アバター・ハレルヤ山」に改名するほど、強く主張した。

事の真偽は不明だが筆者が想像するに、欧米人からしたらどの山も同じに見えて、あのコメントになってしまったのではないかと思う。とはいえ、現地では『アバター』の装飾やグッズも多くあり、非公式でちゃっかり商売につなげている。

ちなみに、期待の続編となる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が、アメリカでは今年末に公開が予定されている。おそらく来年は、張家界市がまたもやアバター効果を狙いに行くだろう。武陵源を訪れるなら、そのときが面白いはずだ。

おすすめの記事