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China Report No.07「解説!中国プロバスケットボールリーグ(CBA)後編」

【No.07】解説!中国プロバスケットボールリーグ(CBA)後編

前編では「八一ロケッツ」と「上海シャークス」の栄光と没落について述べたが、後編では11回の最多優勝を誇る“最強チーム”「広東サザンタイガース」を中心にCBA(Chinese Basketball Association)を解説していく。

初優勝までの道のり

「广东华南虎」(広東サザンタイガース)も八一ロケッツと同じく、1995年のCBA開幕時に参加していた老舗8チームのひとつだ。開幕シーズンでは準優勝し、以降も常に上位をキープしていたが、王治郅(ワン・ジジー)を擁する八一ロケッツと姚明(ヤオ・ミン)を擁する上海シャークスの厚い壁に阻まれ、長いこと優勝できずにいた。

しかし、二人がNBAに移籍しチーム戦力が低下すると、誰も広東サザンタイガースを止められなくなった。2002年に入団した易建聯(イー・ジャンリャン)が大活躍し、2003-04シーズンで悲願の初優勝。そこから3連覇を達成したのだ。

易建聯もNBAに移籍

易建聯の活躍はNBAの目にも止まり、2007年にミルウォーキー・バックスへ移籍。王治郅、巴特爾、姚明、田卧勇太、ハ・スンジン(韓国)に続く中国人4人目、アジア人6人目のNBA選手となった。

ルーキーイヤーの2007-08シーズンから先発として抜擢され、11月9日のヒューストン・ロケッツ戦では姚明との対決が実現。この試合は中国でもテレビ中継され、2億人が観戦する伝説的な試合となった。

しかし、同じチームに定着することができず、その後はワシントン・ウィザーズ、ダラス・マーベリックスなどを転々とした。そんな境遇だったにもかかわらず、5年間で272試合に出場。ニュージャージー・ネッツにいた2009-10には1試合平均12得点、7.2リバウンドをマークした。

2012年からは広東サザンタイガースに復帰。その後リーグの中心選手として活躍し続け、34歳の今でも現役だ。2018-19にはMVPを獲得しており、衰え知らずのCBAレジェンドになっている。

今も第一線でプレイしている易建聯

大勢の代表選手がひしめく強豪チーム

さて、広東サザンタイガースが特殊なのは、スター選手である易建聯が移籍した後も、強さを保ち続けたことだ。2007-08から4連覇。2012-13に優勝。以降5シーズンは優勝から遠ざかってはいたものの、2018-19から昨年の2020-21まで3連覇し、計11回も優勝。他を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけている。

また、チームが強いので当然ではあるが、中国代表に選抜される選手がとても多い。2021-22にロースター入りしている選手の中で趙睿(25歳)、徐傑(21歳)、任馳飛(31歳)、周鵬(32歳)は、昨年11月に行われた「FIBAワールドカップ2023」アジア地区予選で日本代表と戦ったときの中国代表メンバーだ。有望な若手から易建聯のようなレジェンドまでいるのだから、もはや無敵といっていい。

CBAが開幕してから25年強。経済成長が激しい中国はスポーツも企業も個人も、良くも悪くもダイナミックで、天下を取ったと思ったら翌年には倒産したり、撤退したりしていることも多い中、トップの座を堅持していることは驚嘆に値する。

強さの秘密は何か?

では、なぜこんなに強いのか。色々な要因があるだろうが、まずスポンサーが安定していること。オーナー企業は広東宏遠集団有限公司という国際物流を手掛けている企業で、1993年のチーム設立時から今に至るまで変わっていない。逆に、姚明の古巣である上海シャークスは経営危機に陥りスポンサーがコロコロ変わったが、あんな状態では選手は試合に集中できないだろう。

次に、中国大学生バスケットボールリーグ(CUBA:Chinese University Basketball Association)の強豪校 広東工業大学との密接な関係。バスケ熱が高い中国では大学バスケもかなりの人気を誇っている。その中でも広東工業大学は強豪校として有名で、活躍した選手はそのまま地元の広東サザンタイガースに入団するケースが多い。易建聯や周鵬もここの卒業生だ。有望な選手を継続して獲得できる仕組みができており、それが強さの秘密になっているのかもしれない。

話は逸れるが、以前に企画した「茨城ロボッツ 特別座談会」に出席した筑波大学の留学生 曹畅(ソウチョウ)さんは、CUBAの名門 浙江大学で活躍したバスケ選手だ。

玉座を争う激しい戦い

ここまで読むと、「広東サザンタイガースが強いのはわかったが、一方的でつまらないのでは?」と思う人もいるだろう。ところが、決してそうならないのがプロスポーツの面白いところ。常に広東サザンタイガースに食らいつき、玉座を奪おうとしている「辽宁飞豹」(遼寧フライングレパーズ)の存在も光っているのだ。2019-20、2020-21と準優勝しており、今シーズンは首位を走っている。

このチームも代表選手が多く、中でも郭艾倫(28歳)は「中国ナンバーワンガード」と呼ばれている。そして同じく代表の趙継偉(26歳)とガードコンビを組んでおり、二人は遼寧フライングレパーズでも中国代表でも息の合ったプレイで相手チームをかき回す。この二人も昨年の日本戦のメンバーだ。

「FIBAワールドカップ2023」があるため、今年と来年は国際試合が多い。CBAを少しでも知っておくとグローバルな視野でバスケ観戦を楽しめるのでオススメだ。

遼寧は広東から玉座を奪えるか!? 強豪同士の戦いが試合を白熱させる

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